マンガ家を目指している人で、マンガの専門学校に行こうか、それとも個人で練習して持ち込みをするか、迷う人も少なくないのではないかと思います。
よくマンガの専門学校に行くのは無駄、と言われたりもしますし、専門学校に行かずに連載している作家さんも実際たくさんいます。(むしろそのほうが多い)しかし、やはりプロを目指す人にとって、マンガを専門的に学べる環境は魅力的ですよね。
では、プロのマンガ家になるためには、専門学校は行ったほうがいいのか、それとも行く必要はないのか?
今回、現役で実際にマンガ専門学校に通っている3人の方に突撃インタビューしてきました!それを元に、プロを目指す人は専門学校に行くべきなのかどうかについて書いていきたいと思います。
目次
現役生に聞いたマンガ専門学校の実態
時間が経つにつれ、実力差が広がる
専門学校に入学した時点では、実力差はあるにはあるもののそこまで大きな差はなく、みんな「まだまだこれから」という意識があります。
しかし、2年生になってくると、それぞれ実力に差が出てくるようになり、人によっては担当編集者が付いている人もいれば、まだ一作品も完成したことがない人も出てくるようです。
そうなると仲間内でマンガの話がしづらくなり、例えば既に担当が付いている人が「担当とこないだ打ち合わせをしてこう言う事を言われた」、というような話をするとまだそこまで行っていない人は気まずくなって話に入らなくなる。
話している方も気を使って、だんだんマンガの話をその人の前ではしなくなる。そうして、気づけば仲が良かった人とも距離が出来てしまうということもあるようです。
途中で脱落する人が出てくる
実力差が大きくなってくると、自分には連載は無理だと途中で諦めて学校を辞める人が出てくるようになります。それが仲の良かった友達という場合もあり、なかなかシビアな世界です。
しかし、逆に言えばそうやって最後まで生き残っていく人は、要するに本気でマンガ家を目指していて、実力もある人間だけが残っている状態になっていくので、そういった人だけで集まるとマンガの話で盛り上がり、お互いに原稿を見せ合いアドバイスしたり、やる気を高めあう存在になっていきます。
マンガの世界はスポーツと同じように実力主義の世界です。その中で活躍できるようなマンガ家を目指すなら、ただ仲のいいだけでなく、お互いに高め合える関係が作れるのは、専門学校を卒業するメリットになります。
一人暮らしの人の方が結果が出る
これはしっかりと統計をとった訳ではないので、正確なデータではないのですが、一人暮らしをしている人の方が「絶対に卒業するまでに結果を出す」という意識が高く、
逆に実家暮らしの人は比較して「卒業しても描ける」という意識が強く、結果が出るまでのスピード意識が低いようです。
全員が全員そういう訳ではないですが、逃げ場をなくす意味でも本気でマンガ家を目指すなら、一人暮らしをするといいかもしれません。
漫画専門学校に行く4つのメリット
漫画を基礎から学べる
漫画専門学校に行けば、マンガを基礎から学ぶことができます。
1人ではまず何から学べばいいかわからないので、間違った学習をしてしまったり、偏った技術をつける可能性が出てきます。
キャラクターを描くのがとても上手いのに、ストーリー構成がめちゃくちゃだったりしたら魅力的な作品を作ることができません。
漫画専門学校に行けば、そのような偏った学習をすることがなく、独学では難しい技術や知識的な部分を基礎からしっかり学ぶことができます。
アシスタントをやるにしても、仕事をとるにしても、基礎があって初めて出来ることです。
漫画専門学校に行けば比較的効率よく基礎を学ぶことができます。
プロの漫画家の指導を受けることができる
漫画専門学校には講師にプロの漫画家を採用しているところもあります。
プロが現場で使っているような技術や経験を聞くことができるのは、学校の特権です。
素人の漫画を勉強をしているだけの人がプロに会うことが難しいので。
またプロの方と良い関係を築くことができれば、人脈も幅広くなり仕事を獲得しやすくなります。
業界とのつながりを作れる
漫画専門学校ではプロの講師を雇う人脈があったり、編集者たちとのパイプを持っている場合が多いです。
さらには学校の就職センターなどでは独学では知りえることができないような莫大な情報が蓄積されています。
そういった業界とのつながりを作る道がたくさんあるのは専門学校の強みです。
同じ目標を持つ仲間を作れる
マンガ制作は比較的に孤独が作業が多いです。
その結果、何が一番の問題になるかというとモチベーション管理です。
人間は社会的な動物なので、1人では生きていくこともできないし、同じことをひたすら続けることは難しいです。
しかし、専門学校には同じ目標を持つ仲間がたくさんいるので、お互い励まし合ったり、息抜きしたり、情報交換したりとモチベーション管理などがしやすいです。
もちろん逆に周りと自分を比べてモチベーションが下がることもありますが…
結局、専門学校に行ったほうがいいの?
当たり前ですが、マンガの世界は実力主義の世界です。そのため、専門学校に行ったからといって、マンガ家として連載に近づくというわけではなく、あくまでどれだけ自分が本気でマンガ家を目指せるかどうかのようです。
そのため、本気で目指している人ならば専門学校に行くかどうかはそこまで重要ではなく、ただ、専門学校に行ったことがきっかけで、本気で漫画家を目指すようになる人もいるので、そういう意味では専門学校に行くのは無駄ではないと言えます。
また、設備や環境が整っていたり、業界とのつながりを作れるという点で、特にデジタルのスキルを身につけたいという人や、雑誌連載だけではなく、マンガやイラストに関する仕事をしたいという人は、独学でやるよりも、専門学校に行くメリットは大きいでしょう。
専門学校出身の有名漫画家
荒木飛呂彦
代表作:ジョジョの奇妙な冒険
高校時代に同年代でマンガ家デビューした人を見て焦りを覚え、それ以来投稿を始め、高校卒業後に仙台コミュニケーションアート専門学校にに入学。在学中に受賞しデビュー。
- 桂正和
代表作:ウィングマン、ZETMAN、電影少女、I””S
高校卒業後、阿佐ヶ谷美術専門学校に進学し、在学中に賞を受賞しデビューする。
- 美水かがみ
代表作:らき☆すた、僕と、僕らの夏、おおかみこどもの雨と雪
高校卒業後、専門学校を経てゲーム会社に入社。当時、並行してやっていた同人活動をしていたところ、編集者に声をかけられ連載に至る。
- 大久保篤
代表作:ソウルイーター
東京アニメーター学院を卒業後、アシスタントなどを経て漫画家デビューする。
- 臼井儀人
代表作:クレヨンしんちゃん
高校卒業後、デザインの専門学校を卒業。広告会社で仕事をしながら投稿を続け、受賞しデビューする。
- 新沢基栄
代表作:ハイスクール!奇面組、フラッシュ!奇面組。僕はしたたか君
高校卒業後、新潟から上京し日本工学院専門学校に入学。卒業後はフリーターをしながら投稿を続け、デビューする。
- 平野耕太
代表作:HELLSING、ドリフターズ
高校では漫画研究部の部長をしており、卒業後は東京デザイナー学院のアニメーション科に進み、在学中にデビューする。
東京でおすすめのマンガ専門学校
代々木アニメーション学院【クリエイター科マンガコース】
基本データと特徴
所在地:東京都渋谷区代々木1−57−1(東京校、その他大阪、名古屋校がある)
最寄駅:JR総武線 水道橋駅から徒歩2分
代々木アニメーション学院は、「代アニ式メソッド」という独自の指導法でカリキュラムが組まれていて、デビュー実績も多いです。それぞれの授業ごとに専門家が指導し、担任がついて個別に相談することができ、また卒業後のフォローもしっかりしてくれます。
また、デジタルにも力を入れていて、デジタルイラストの基礎やクリップスタジオのスキル、pixivやcomicoなどのサイトへの投稿も指導してくれるので、デジタルイラストのスキルをぜひ身につけたいという人や、逆にWebに苦手意識があるという人にオススメの学校です。
デビューしたマンガ家
- 本田真吾「ハカイジュウ」
- 玉越 博幸 「BOYS BE」「ガチャガチャ」など
- 村崎翠 「緋色王子」
- はっとりみつる 「ケンコー全裸系水泳部 ウミショー」
- 小村あゆみ 「うそつきリリィ」
- 橋口みのる 「時をかける少女」
学費
全日制入学金:15万円
1年目:110万円(授業料75万円、施設設備費21万円、教材費7万円、終身校友会費2万円、諸行事費5万円)
2年目:105万円(年間授業料75万円、施設設備費21万円、教材費4万円、諸行事費5万円)
合計:230万円
総合学園ヒューマンアカデミー【マンガカレッジ】
基本データと特徴
所在地:東京都新宿区高田馬場4-4-2(東京校、その他全国にキャンパスがある)
最寄駅;東京メトロ副都心線丸ノ内線、都営新宿線 新宿三丁目駅徒歩2分
ヒューマンアカデミーの大きな特徴は、非常に規模の大きい学校なので、業界とのつながりが深くデビューや就職のチャンスが非常に多いところです。これまでに多数のデビュー実績があり、在学中に担当が付いたり、有名連載作家のアシスタントになれる人も少なくない。
また、企業からのマンガ制作依頼やイラスト、デザインの制作などを依頼されることもあり、進路が非常に広いことも魅力の一つです。
年に一度マンガ合宿があり、そこでは50の出版社から70人以上の編集者が集まるそうで、一気に多くの編集者と関わることが出来る。この合宿の規模からしても、業界でのこの学校の影響力は大きいです。
デビューしたマンガ家
- 「朱泥の旅人」週刊ヤングジャンプ
- 「After Summer」週刊少年サンデー
- 「春よ来るな」月刊少年マガジン
- 「婚約生」マーガレット
- 「こんな初恋」マーガレット
- 「SOS」週刊少年サンデー
- 「あらいどき」マンガボックス
- 「さばかん」comico
他、多数
学費
全日制入学金:300,000円
授業料:1,100,000円/年
合計:250万円
東京デザイナー学院【マンガ科】
基本データと特徴
所在地:東京都千代田区神田駿河台2-11(御茶ノ水本校舎)、東京都千代田区神保町1-34-2(神保町校舎)、東京都千代田区西神田2-5-6(西神田校舎)
最寄駅:JR総武線 水道橋駅から徒歩6分
2013年で創立50周年を迎えた伝統校である東京デザイナー学院。他の専門学校よりもデジタルについて深く学ぶことができ、クリップスタジオを基礎から学ぶ講義や実践する機会が多い。
また、東京デザイナー学院は自習環境が非常に整っていて、授業時間外や放課後に解放されており、いつでも設備が整っていて集中しやすい環境の中で制作を進めることが出来るのも魅力の一つです。
デビューしたマンガ家
- おりとかほり「ロリータ・ファイター」ちゃおDX
- 彩崎廉「絶園のテンペスト」月刊少年ガンガン
- 藤本新太「Red Raven」月刊少年ガンガン
- 藤屋いずこ「カタリベのりすと」月刊少年シリウス
- 中野さや「バイバイラブレター」りぼん
学費
1年目:1,350,000円
2年目:1,364,000円
合計:271万4000円
日本工学院【マンガ・アニメーション科 マンガコース】
基本データと特徴
所在地:東京都大田区西蒲田5-23-22(蒲田キャンパス)
最寄駅:JR京浜東北線 蒲田駅徒歩2分
日本工学院の大きな特徴は、施設設備が非常に整っているところです。実際にプロが使う機材が一通り整っており、使ったことがない人でも一から教わることが出来るので、デジタルでマンガを描きたい!という人にはオススメ。
主な出版社は、「少年ガンガン」「少年マガジン」など。主な就職先はスタジオ・ジブリ、カプコン、スタジオぴえろ、亜細亜堂、サンライズ、GONZO、STUDIO 4℃、ガイナックス、日本アニメーションなど。
就職先は有名な企業が多く、この他にも多数のデビュー実績、就職先があり、漫画の基礎はもちろんだが、就職支援にも力を入れています。漫画家になりたい人や漫画に関係した仕事に就きたいという人に向いている学校です。
デビューしたマンガ家
- 平方昌宏 「クロガネ」「新米婦警キルコさん」
- 真田一輝 「さつきばれっ!」「執事少女とお嬢様」
- 宇田川佳代「ランドスケープ」
学費
入学金:20万円
1年目:140万5650円(授業料74万円、設備45万円、その他諸費1万5650円)
2年目:授業料122万円
合計:282万5650円
東京デザイン専門学校【マンガ科】
基本データと特徴
所在地:東京都渋谷区千駄ヶ谷3−62−8
最寄駅:JR山手線 原宿駅徒歩3分
東京デザイン専門学校の特徴は、個別指導によりそれぞれにあった指導が受けられるため、入学時の実力などに左右されずに自分の実力を伸ばすことが出来ます。
1年目は、描画やストーリー基礎を学び、2年目では「ストーリーマンガ専攻」と「コミックイラスト専攻」に分かれ、それぞれ専門的に学ぶことが出来ます。
最近は雑誌で連載するマンガだけでなく、Web上での広告としてもマンガは注目されており、コミックイラスト専攻ではあらゆるニーズに応えられるイラストレーターとして仕事も取れるようなのマンガ家の実力をつけることが出来ます。
デビューしたマンガ家
- 冬芽沙也「ウソ徒然」
- 清水望「屍探偵ホームズ」
- 稲葉誠「手をつながないと死ぬ」
- 今豊太郎「今印」
著名なマンガ家は少ないですが、就職先が多く、印刷・出版・イラスト・広告などの業界につながりがあり、卒業後フリーターや関係のない職業に就くことになる心配はありません。
学費
1年目:1,220,000円
2年目:1,040,000円
合計:226万円
東京アニメーター学院
基本データと特徴
所在地;東京都千代田区三崎町3-10-1
最寄駅:JR総武線 水道橋駅徒歩5分
東京アニメーター学院の大きな特徴は、学生のうちにデビューするためのサポートが充実していること。
1つは、年に3回お雑誌編集者を学校に招いて行われる審査会というのがあり、編集者に実際に作品を審査してもらうことが出来ます。この審査会をきっかけにデビューまたは、アシスタントになることもあり大きなチャンスになります。
また、2つ目は学校の周辺は出版社が多く、授業の一環として出版社見学があり、そこでプロの制作過程や原稿を見させてもらったり、自分の作品を出版社の編集者に見てもらうことも出来ます。
デビューしたマンガ家
- 大久保篤 「ソウルイーター」
- 八神ひろき 「DEAR BOYS ACT3」
- 白石ユキ 「となりの恋がたき」「プラスチックガール」
- 明日野暦 「メタモルフォーゼ」
- 加藤絵理子 「やさしい竜の殺し方」
学費
申込金:3万円、入学金:10万円
1年目:84万円(授業料36万円、諸経費17万円、実習費18万円)
2年目:71万円(授業料36万円、諸経費17万円、実習費18万円)
漫画家プロ養成本科(二年制)合計:168万円、漫画家プロ養成専科(一年制)合計:97万円