「こういったイラストを描いてほしいのですけど、いくらでできますか?」
この質問って答えるのが難しいですよね。
自信も実績もないし、高い値段を設定するのは気が引ける。しかし、だからといって安く設定しすぎても、自分が苦しくなる。
クリエイティブ業界の相場はあってないようなものと言われているように、イラストの案件を受ける時の値段設定って難しいですよね。値段設定のうまくできていないイラストレーターの方が多いのが現実。
ですので今回は、イラストレーターが失敗しない値段設定の方法をお教えします。
目次
フリーランスのイラストレーターは値段設定で失敗する
こんなイラストレーターの方がいました。
「イラストの案件が来たが、値段設定の方法を分からず、とりあえず1枚3000円で請け負ったが、あとあとそのイラストを描くのに、7~8時間かかってしまう事に気付いた。」
7~8時間かけて3000円ということは、時給約400円という計算なります。
せっかくイラストを描けるように努力してきたのに、これではキツイですよね。しかもこれで修正が何度も来る可能性もあるのです。
他にも、値段の安い案件を先に請け負ってしまったがために、そのすぐあとに来た値段の高い案件を逃してしまった方もいます。
この状態でモチベーションを高く持ち、自分の実力をフルに発揮したイラストを描くことは困難です。
イラストレーターに限らず、フリーランスになりたての方が価格設定で失敗してしまう理由として、経費感覚がないという事が挙げられます。
バイトをしていた時、会社で仕事をしていた時は、収入がそのまま自身の利益になっていました。しかし、フリーランスは違います。
その収入から経費が引かれるからです。
たとえ月収20万円の収入という目標を達成できても、20万円の利益を得る事は出来ないのです。フリーランスのイラストレーターは今まででは必要なかった知識が必要となる為、値段設定で失敗する方が多いです。
料金表の必要性
料金表とはイラストレーターが、発注者にイラスト制作にかかる料金の詳細をまとめた表のことです。価格表、制作メニューと言われることもあります。
料金表が必要な理由として、発注者もイラスト制作依頼の料金相場が分かっていないという事が挙げられます。
もし、あなたがイラスト制作の依頼をする発注者の立場だったら、料金の相場が分からない状況でどちらに依頼しますか?
- 1枚5000円とだけ伝えてくれる人
- イラストを描くのにこういったものが必要で、これだけの時間がかかるので、1枚5000円と伝えてくれる人
どう考えても後者に依頼すると考える人が多いと思います。
イラストレーターと発注者の信頼関係が成り立っていない時に、料金表は信頼を得るという効果もあります。
料金表を提示してくれるイラストレーターにしか、依頼をしないという発注者もいますので料金表は必要です。
また、料金表を作るという事は、発注者のためだけでなく、あなた自身のためでもあります。先ほどフリーランスのイラストレーターになりたての時は値段を決める事が難しいと言いました。
そんなとき料金表があれば、
キャラクターのイラストだから○○円。
背景まで描くからプラス○○円。
など、価格設定を簡単に行う事が出来ます。ほかにも、修正1回いくらと決めておくと、修正が来るたびに悩む必要もなくなります。
このように料金表は、発注者、あなた自身、双方が納得いく値段をスムーズに決めるために必要なものです。
料金表の作り方
料金表を作ったら、同じようなイラストは同じような値段に設定されるように思いますよね。しかしそれは間違いです。
発注者によって同じイラストでも、料金が上下する事があるからです。なので、料金表で設定する値段はあくまでイラストを描く時の「最低限」の値段という事を忘れないようにしましょう。
時間
料金表を作る時にまず目安となるのが、イラストの制作にかかる時間です。クライアントと打ち合わせする時間やラフ画などイラスト請けた為にかかる時間は全て価格設定の条件に含めましょう。
【制作や打ち合わせに時間×時給(自分で設定する)】
時給の基準が思いつかない場合は、とりあえず1時間=1000円として計算しましょう。アルバイトをするときのイメージを思い出してみてください。
難易度
次に考えるのがイラストの難易度です。先ほどの時間を最低限の値段として、イラストの難易度が上がるにつれ値段も上げていきましょう。
○○の場合はプラス何円など細かくルールを決めておくと設定しやすくなります。イラストの難易度はイラストの技法、サイズの大きさ、細かさ、カラー、どこまで描くかなど、依頼内容によって変わります。
自分の能力に応じて設定してみましょう。
技法
アニメ塗りなど、工数の少ないイラストは描きやすいですよね。逆に厚塗りや実写系などは工数も多く難易度が高いです。
工数が多いイラストほど作業量が増えるので、一般的に値段は高くなっていきます。
大きさ
また、イラストの大きさが大きくなればなるほど、値段を高く設定できます。
基準としては、
・1カット=3000円
・A4=2万円
・B4=3万
・A3=4万
大体このくらいの基準で価格設定をしているイラストレーターが多いようです。
どこまで描くか
これはイラストの顔だけなのか?全身なのか?背景まで描くのか?によって変わってきます。
発注者にこれらを聞き、自身の作業量を目安として、納得のいく値段設定をしてください。
相場
かかる時間や難易度はイラストレーターによって変わるような曖昧なものですし、基準がないと値段は決めにくいですよね。
そんなとき見るべきものはやはり、競合の相場です。
同じようなイラストを描いている企業や、フリーランスがどのくらいの値段設定をしているのかを参考にしましょう。
イラストの相場が乗っている記事やサイトは調べると沢山出てきます。できるだけ自身が依頼を受けたイラストに近いものを探し出し、相場と比較して値段を決めましょう。
イラストの値段設定で気を付けるべき4つのこと
自分の料金表が完成しても、まだ適正な値段を設定する事は出来ません。
自身が依頼を受けるという事は、クライアントとなる発注者がいるという事です。相手の状況によって柔軟に対応しなければいけない場合があります。
これを怠ると双方が納得いく値段が決まらなかったり、儲け損ねたり、なんて状況になってしまいます。そんな事にならないために、以下の4つの事は頭に入れて値段を設定しましょう。
発注者の予算を聞く
依頼されたイラストにどのくらいお金をかけられるか、発注者に聞いてみましょう。
発注者がそのイラストをどんな用途、どれくらいの規模で使用するかによって、予算は変わってきます。
発注者が個人的な趣味で使用しようとしている場合は、当然予算もそこまで多くはないかもしれません。逆に企業の大規模なサイトで使用するイラストである場合は、予算も多く設定している可能性が高いです。
「同じようなイラストをこの前1万円で書いたから1万円でいいですよ」なんて決めてしまっては、せっかくのチャンスを逃してしまいます。
値下げを受けるときは他の価値をつけてもらう
イラストレーターは自身のイラストを安売りしてはいけません。いくら仕事がほしいとは言っても、タダで描くレベルの価格設定をしてしまっては今後の活動にも影響が出てしまいます。
「あれ、この前は○万円で請け負ってくれたよね」
こんなことを言われて、今後値段を高く設定する事が難しくなってしまう可能性が高くなり、一生納得のいく価格設定ができなくなります。
また、報酬が低いとモチベーションが上がらず手抜きのイラストになってしまって、結果的に自分の評価を落としてしまうこともあります。
ですが、いくら安売りしてはいけないといっても、発注者が折れてくれない場合があります。そんなときは、値段以外の価値をつけてもらいましょう。
納期を伸ばしてもらう、実績を紹介してもらう、大量発注や継続発注をしてもらう。報酬とか別の価値をつけて実績を積みましょう。
それでも発注者が納得してくれない場合は、イラストの背景をなくすなど、作業量やかかる時間を減らして、交渉しましょう。
相場は変動する
どんなジャンルでもそうですが、相場というのは需要と供給のバランスによって決まってきます。需要があって供給が少なければ値段は上がりますし、需要がなく供給が多ければ値段は下がります。
これはイラストも例外ではありません。相場は時間によって変動するのです。
先ほど相場と比較して、イラストの値段を決めると言いましたが、それはあくまでも目安だという事を忘れてはいけません。
自分のレベルを考える
イラストを描き始めて間もない時は1つのイラストにとても長い時間がかかってしまいます。1カットのイラストに何日もかかるという人もいます。
しかし、何回も何回も依頼を請け、経験が豊富になってくると数時間で描けるようになったりします。そうしたら、1日に何枚もイラストを描けるのですから、1枚の値段を下げて多くの依頼を請けるという事も可能になってきます。
またイラストの技術が上がれば、当然1枚のイラストを高い値段に設定してもいいですよね。
このように、今の自分のスキルを常に頭にいれ、月にどれくらいの利益が欲しいから、1枚どれくらいの値段に設定しようと考えることが大切です。
イラスト単価を上げる方法
残念ながら、イラストの単価を上げるのに簡単な方法はありません。しかし地道にコツコツ努力する事で将来的に単価を上げる方法はあります。
何カ月も何年もイラストを描いているのに、単価が全然上がらないという事にならない為にも以下のイラストの単価を上げる方法を知っておきましょう。
技術を高める
「そんなの分かってるよ」と思ってしまうかもしれませんが、質の高いイラストを描く事が出来ればイラストの単価は上がります。誰もがせっかくイラストを描いてもらうのだったら、技術の高い人に描いてもらいたいですよね。
しかし、ここで落とし穴があります。
イラストを描く技術を高めたところで、期待できる値上がりはそこまで大きくありません。クオリティの高いイラストで安く描いてくれる人は探せばいくらでもいるので、そちらに流れてしまいます。
もちろん、自身の成長のために質の高いイラストを描けるように努力する事は大切な事です。
しかし、イラストの単価を上げるという意味では、わざわざ競争率の高い、「技術」で勝負する必要はありません。
専門性を高める
○○専門のイラストレーターというのは、○○のイラスト以外の依頼は来にくくなりますが、○○のイラストの依頼は来やすくなります。
例えば、あなたがネズミを使ったロゴを作りたい発注者だった場合、「オールジャンルのイラストレーター」と「動物専門のイラストレーター」どちらに頼みたいですか?
動物専門のイラストレーターですよね。
次に、「動物専門のイラストレーター」と「ネズミ専門のイラストレーター」だったらどうでしょう?「ネズミ専門のイラストレーター」に頼みたいですよね。
このように専門性を高めれば高めるほど、依頼を請けやすくなります。
なんでも描けるイラストレーターと名乗ってしまうと、逆に依頼を請けづらくなってしまうのです。
ここで忘れてはいけないのが、ただ専門性を高めるだけではダメだという事。値段は需要と供給で決まります。いくら供給が優れていても、需要がなければ単価を高く設定することはできません。
需要が高くて、供給が少ないものというのは、そう簡単に見つかるものではないですが、それを見つけることができれば、単価の高いイラストを描くことができます。
営業力を高める
極論、単価を高くしたいなら、あなたのイラストの単価を高く設定し、それを発注者が納得すればいいだけの話です。
もちろんウソはダメですが、自分が過去に描いたイラストの値段、他者が同じようなイラストをいくらで請け負っているか、このイラストは自分が持っている特別なスキルがないと描けないなど、事実を並べて発注者に納得してもらいましょう。
もちろん営業なので、直接会った方が交渉はうまくいきやすいです。地理的に近い人のところに出向いて直接営業をかけるというのも効果的です。
また、自身と同じようなイラストを描ける人がいない環境に身を置くという事も依頼を請けやすく、単価も上げやすいので大切になってきます。
まとめ
以上の事を押さえておけば、「こういったイラストを描いてほしいのですが、いくらでできますか?」と言われたときに、もう迷うことはありません。
適切な値段を提示する事ができ、相手にも納得してもらえるはずです。
適正な値段で依頼を請けられるという事は、あなたが1つのイラストを集中して描く事ができ、あなたのベストを尽くしたイラストを描くことができます。
そのおかげでクオリティの高いイラストを描けますし、発注者もその方が圧倒的に好感度が上がり嬉しくなります。
つまり、納得のいく価格設定ができるという事は、あなたと発注者の双方にとってWinWinな事なのです。
だからこそ、自分のイラストに自信を持って、納得のできる値段設定をしましょう。